タイ古式マッサージの「セン」とは?種類や効果
記事更新日:2024年8月30日タイ古式マッサージの中心的な概念である「セン」には、多様な種類が存在し、それぞれが特有の効能を発揮します。
センとは人体内の経絡に沿った経路のことで、マッサージによって疲労回復、血行促進、痛み緩和などの幅広い効果が得られるでしょう。
例えば主要なセンには「真理(まり)線」「生命(しょうみょう)線」「大乗(だいじょう)線」などがあり、それぞれ気の流れを整え、特定の症状に効果的な働きをします。
経絡に沿ったマッサージは、心身の健康維持や疾病予防に寄与する伝統的な療法として、世界中から注目されています。
タイ古式マッサージにおいては、体の中にある「セン」を重要視しています。センは誰の体にも必ずあり、目に見えないエネルギーのラインだとされています。センの種類や効果をおさえてしっかり施術していくことにより、タイ古式マッサージの効果をよりしっかりと発揮させられるようになります。
センとは具体的にはどういったものなのでしょうか。タイ古式マッサージを受けたり施術したりするなら、センについてしっかり理解しておきましょう。今回は、タイ古式マッサージのセンについて詳しく説明します。
目次
タイ古式マッサージのセンとは?
タイ古式マッサージのセンとは?以下の通りです。
・体内に走る10本のエネルギーラインのこと
・目には見えないエネルギーの通り道
こちらを順にご紹介します。
体内に走る10本のエネルギーラインのこと
タイ古式マッサージの根幹をなすのが「セン」と呼ばれる体内のエネルギーラインです。
センとは、私たちの体内に10本以上走る経絡のことを指します。
これらのラインに沿ってマッサージすることで、体内を流れるエネルギー(気)の循環が整えられ、心身の健康が保たれるのが特徴です。
主要なセンには「真理線」「生命線」「大乗線」などがあり、それぞれが特徴的な働きを担っています。
「真理線」は、心の健康「生命線」は、生命力の源「大乗線」は、全身の調和を司ります。
他にも「腰椎線」「頭頂線」など、特定の部位の症状改善に効果的なセンも存在します。
センの流れが滞ると、様々な不調が引き起こされるでしょう。
しかし、熟練された手技によってセンに沿ってマッサージすることで、エネルギーの滞りを改善し、心身の活性化が期待できるのです。
この独自のコンセプトは、タイ古式マッサージの大きな魅力の1つです。
伝統的な知恵に基づきながら、現代医学的にも注目されている「セン」は、心身を整えるための重要な経絡なのです。
目には見えないエネルギーの通り道
経絡とは、体内を縦横に走る細いチャンネルのようなものです。
そこを流れるのが「気(エネルギー)」です。
気が円滑に流れることで、心身の調和が保たれます。
しかし、ストレスや生活習慣の乱れなどによって、気の流れが滞ってしまうと、様々な不調が引き起こされるのです。
タイ古式マッサージでは、この経絡に沿ってマッサージすることで、気の循環を改善します。
主要な経絡には「真理線」「生命線」「大乗線」などがあり、それぞれ心の健康、生命力、全身の調和を司っています。
経絡に沿ったマッサージによって、エネルギーの流れが整えられ、心身ともに活性化されます。
この目に見えない「経絡」こそが、タイ古式マッサージの根幹をなす重要な概念なのです。
伝統的な東洋医学の知恵が、現代の健康維持に活かされているのです。
10本のセンの場所と役割は?
10本のセンの場所と役割は?以下の通りです。
・イタライン
・ピンラガ
・スマナ
・カタラリ
・サハサランシイ
・タラリィ
・チャンタプサン
・ルチャン
・スクマン
・シキニー
こちらを順にご紹介します。
イタライン
イタラインは、両足の内側を縦に走るエネルギーの通り道です。
このラインは、足の裏からはじまり、膝裏、内もものラインを経て、骨盤まで達しています。
イタラインの役割は主に以下の通りです。
・疲労した足を癒し、元気を取り戻すことです。
足の疲れは体の疲れの原因の一つとなるため、イタラインのマッサージによって足の疲労を取り除くことで、全身のリフレッシュにつながります。
・下半身のエネルギーの流れを良好に保つことです。
イタラインは下半身の重要なエネルギーラインの一つであり、このラインのケアによって、コアの安定性や下半身の柔軟性が高まります。
・ストレス解消にも効果があります。
イタラインは精神的なストレスの蓄積を解消する働きがあり、リラクゼーションにも役立ちます。
このように、目に見えないイタラインを丁寧にマッサージすることで、足の疲労やコリ、さらにはストレスの解消にもつなげることができるのです。
ピンラガ
ピンラガは、脊柱を中心に左右に走るエネルギーの通り道で、背骨の両側を縦に走っています。
このラインは、頭頂部から仙骨部分まで連なっています。
ピンラガの主な役割は以下の3つです。
・背骨と脊髄のケア
ピンラガは背骨に沿って走っているため、このラインのマッサージによって背骨や脊髄の調整が可能になり、これにより、背中の痛みやこりの改善が期待できます。
・神経系の調整
ピンラガは脊髄を通る神経網と密接に関係しているため、このラインのアプローチによって全身の神経系を調整することができ、これにより、ストレス解消やリラクゼーションにも効果が期待できます。
・エネルギーの循環促進
ピンラガは体のエネルギーの通り道の一つであり、このラインのケアによってエネルギーの滞りを改善し、全身の活性化が期待でき、これにより、疲労回復の強化にも役立ちます。
このように、ピンラガは背骨や神経系、そしてエネルギーの調整に深く関与しており、タイ古式マッサージの中で重要な役割を果たしているのです。
スマナ
スマナは、体の両側を縦に走る主要なエネルギーの通り道です。
このラインは頭頂部から足の付け根まで連なっており、体の中心を縦に分断するように位置しています。
スマナの主な役割は以下の3つです。
・全身のエネルギーバランスの調整
スマナは体の中心を縦に走るため、このラインのアプローチによって全身のエネルギーの流れを調整することができ、これにより、気の巡りを整え、体のバランスを取り戻すことが期待できます。
・免疫力の向上
スマナは体の防御システムと深く関わっているため、このラインのケアによって免疫機能の活性化が期待でき、これにより、体の自然治癒力の向上や、ケガや病気からの回復が促進されます。
・メンタルヘルスの改善
スマナは体と心を結ぶ重要なラインであり、このラインのアプローチによってストレスの解消やリラクゼーションが期待でき、それにより、精神的なバランスを取り戻し、心の健康を保つことができます。
このように、スマナは体のエネルギーバランス、免疫力、メンタルヘルスなど、人体の根幹的な機能に関わっており、タイ古式マッサージの中で欠かせないセンの一つなのです。
カタラリ
カタラリは、体の両脇を縦に走るエネルギーの通り道で、頭頂部から足の付け根まで連なっています。
このラインは体の左右の対称性を保つ上で非常に重要な役割を担っています。
カタラリの主な役割は以下の3点です。
・体のバランス調整
カタラリは体の左右を結ぶ重要なラインであり、このラインのアプローチによって左右のバランスを調整することができ、これにより、体の歪みの改善やポスチャーの改善が期待できます。
・血液循環の促進
カタラリは体の主要な血管と関連しているため、このラインのケアによって血液の巡りを改善することができ、これにより、代謝の活性化や疲労回復にも効果が期待できます。
・神経系の調整
カタラリは脊髄に沿って走っているため、このラインのアプローチによって神経系の調整が可能になり、これにより、ストレス解消やリラクゼーションが期待できるほか、痛みの緩和にも効果が期待できます。
カタラリは体のバランス、血液循環、神経系の調整に深く関わる重要なラインであり、タイ古式マッサージの中で欠かせない存在なのです。
サハサランシイ
サハサランシイは頭頂部から始まり、脊柱に沿って下降していくエネルギーのラインです。
このラインは体の後ろ側を縦に走っており、生命の根源的なエネルギーの通り道となっています。
サハサランシイの主な役割は以下の3つです。
・生命力の源泉
サハサランシイは生命の根源的なエネルギーを司るため、このラインのアプローチによって体の深層部から生命力を引き出すことができ、これにより、全身の活力の向上が期待できます。
・精神性の向上
サハサランシイは精神性と密接に関係しており、このラインのケアによって瞑想やスピリチュアルな体験が深められ、これにより、心の安定や自己発見につながる効果が期待できます。
・免疫機能の強化
サハサランシイは体の防御システムとも関係しているため、このラインのアプローチによって免疫力の向上が期待でき、これにより、ケガや病気からの回復が促進されます。
このように、サハサランシイは生命力の根源、精神性の向上、免疫機能の強化など、人体の根幹的な機能に深く関わっているため、タイ古式マッサージの中で非常に重要な地位を占めているセンなのです。
タラリィ
タラリィは体の前面を縦に走るエネルギーのラインで、頭頂部から下腹部まで連なっています。
このラインは体の中央を通っているため、体全体のバランスを調整する上で非常に重要な役割を担っています。
タラリィの主な役割は以下の3点です。
・消化器官の調整
タラリィは消化器官と深く関係しているため、このラインのアプローチによって胃腸の調子を整えることができ、これにより、消化機能の向上や便通の改善が期待できます。
・感情の調整
タラリィは感情的な中枢とも関係しているため、このラインのケアによって感情の安定化が期待でき、ストレス解消や心の安定化につながる効果が期待できます。
・呼吸機能の向上
タラリィは呼吸器官と連動しているため、このラインのアプローチによって呼吸の深さや質を改善することができ、これにより、リラクゼーションや集中力の向上が期待できるでしょう。
タラリィは体の中央を縦断するエネルギーのラインであり、消化器官、感情、呼吸機能など、人体の重要な機能に深くかかわっています。
チャンタプサン
チャンタプサンは体の前面を縦に走るエネルギーのラインで、眼窩から鼠径部まで続いています。
このラインは体の中央を通っているため、全身のバランスを保つ上で大きな役割を果たしています。
チャンタプサンの主な役割は以下の3点です。
・感覚器官の調整
チャンタプサンは目、耳、鼻、口などの感覚器官と直接つながっているため、このラインのケアによって感覚器官の調整が可能です。
これにより、視力、聴力、嗅覚、味覚などの向上が期待できます。
・循環機能の改善
チャンタプサンは血管系とも深く関係しているため、このラインのアプローチによって血行が良くなり、これにより、全身の循環が改善され、身体の浄化にも効果が期待できます。
・痛みの緩和
チャンタプサンは体の中心を縦断しているため、このラインをケアすることで体の様々な箇
所の痛みを和らげることができ、頭痛、腰痛、関節痛などの緩和が期待できるでしょう。
チャンタプサンは感覚器官の調整、循環機能の改善、痛みの緩和など、人体の重要な機能に深くかかわっています。
ルチャン
ルチャンは体の背面を縦に走るエネルギーのラインで、頭頂部から足の裏まで続いています。
このラインは体の中心を通っているため、全身のバランスを保つ上で大きな役割を果たしています。
ルチャンの主な役割は以下の3点です。
・脊椎の調整
ルチャンは脊椎と密接に関係しているため、このラインのアプローチによって脊椎のアライメントを整えることができ、これにより、背部の痛みの緩和や柔軟性の向上が期待できます。
・神経系の調整
ルチャンは脊髄や主要な神経幹と連動しているため、このラインのケアによって神経系の調整が可能です。
これにより、身体機能の向上や自律神経の安定化が期待できます。
・精神的な安定
ルチャンは精神性とも深くかかわっているため、このラインのアプローチによって精神的な安定が得られます。
瞑想やリラクゼーションの効果も期待できるでしょう。
ルチャンは脊椎、神経系、精神性など、人体の重要な機能に深く関係しています。
スクマン
スクマンは体の両脇を縦に走るエネルギーのラインで、頭頂部から足の裏まで続いています。
このラインは体の側面を通っているため、体の左右のバランスを保つ上で大きな役割を果たしています。
スクマンの主な役割は以下の3点です。
・免疫力の向上
スクマンは体の防御システムと密接に関連しているため、このラインのケアによって免疫力の向上が期待でき、身体の抵抗力が高まり、疾病の予防に効果的です。
・代謝の改善
スクマンは消化器官や内分泌系とも関わっているため、このラインのアプローチによって新陳代謝が改善され、これにより、体重の調整や老廃物の排出が促進されます。
・ストレス解消
スクマンは心理面とも深くかかわっているため、このラインのケアによってストレスの解消が期待でき、精神的な安定が得られ、心身の調和が保たれます。
スクマンは免疫力、代謝、ストレス解消など、人体の重要な機能に深く関係しているでしょう。
シキニー
シキニーは体の両脚の前面を縦に走るエネルギーのラインで、足の裏から股関節を経て腰部へと続いています。
このラインは脚部の機能に深く関与しているため、下半身の健康維持に大きな役割を果たしています。
シキニーの主な役割は以下の3点です。
・脚部の可動性向上
シキニーは股関節や膝関節と深くつながっているため、このラインのアプローチによって脚部の可動域が広がり、これにより、歩行や運動の改善が期待できます。
・下半身の循環促進
シキニーは下半身の血行や体液の流れと関連しているため、このラインのケアによって下半身の循環が改善され、むくみの解消や代謝の活性化が期待できます。
・腰痛の緩和
シキニーは腰部とも連動しているため、このラインのアプローチによって腰痛の緩和が期待でき、腰部の筋肉のリラックスや関節の可動性の改善が得られます。
シキニーは下半身の機能維持に欠かせないセンの1つです。
タイ古式マッサージのセンに沿った施術の効果は?
タイ古式マッサージのセンに沿った施術の効果は?以下の通りです。
・血行の流れを改善する
・体のバランスを整える
・関節可動域を広げる
・深いリラクゼーション効果
こちらを順にご紹介します。
血行の流れを改善する
タイ古式マッサージでは、経絡(セン)と呼ばれる筋肉や組織に沿って圧迫や引っ張りの刺激を与えます。
この刺激により、血行が促進されて血液の循環が良くなり、血液には酸素や栄養が豊富に含まれているため、細胞レベルでの代謝が活発になります。
また、センのマッサージは筋肉の緊張を和らげ、コリや痛みを和らげる効果もあり、筋肉の緊張が緩むと、血管も柔らかくなり、血流がスムーズになります。
さらに、ストレス解消の効果も期待できるでしょう。
マッサージを受けることで自律神経のバランスが整い、リラックスした状態になり、リラックスすると、血管が拡張して血流が良くなります。
このように、タイ古式マッサージのセンに沿った施術は、血行促進、筋肉緊張の緩和、ストレス解消など、様々な面で良い効果をもたらします。
定期的にマッサージを受けることで、心身ともに健やかな状態を維持できるでしょう。
体のバランスを整える
タイ古式マッサージでは、経絡(セン)と呼ばれる身体の通り道に沿って、指圧やストレッチなどの刺激を加えます。
これにより、経絡に滞りがちな気(エネルギー)の流れが改善されるでしょう。
気の流れが良好になると、身体各部の機能がバランス良く働くようになります。
例えば、消化吸収、血液循環、ホルモンバランスなど、様々な生理機能が適切に調整されるようになるでしょう。
また、センのマッサージは筋肉の柔軟性を高める効果もあり、筋肉が柔らかくなると、関節の可動域が広がり、体の歪みが改善され、これにより、姿勢の改善や、痛みの解消にもつながります。
さらに、マッサージによってストレスが軽減されると、自律神経系のバランスが取れるようになります。
ストレスが溜まると、様々な身体的・精神的な不調を引き起こしますが、自律神経系が安定すれば、全身の調和が保たれます。
このように、タイ古式マッサージのセンに沿った施術は、気の流れ、筋肉の柔軟性、自律神経系のバランスを整えるなど、体の総合的なバランスを保つ効果があるのです。
関節可動域を広げる
タイ古式マッサージでは、経絡(セン)と呼ばれる身体の通り道に沿ってマッサージを行います。
このときに加えられる圧迫や引っ張りの刺激により、筋肉や結合組織が柔軟になります。
筋肉や結合組織が柔らかくなると、関節まわりの可動性が改善され、関節を曲げたり回すことができる範囲が広がるのです。
これにより関節の可動域が広がり、動作の自由度が高まります。
例えば肩関節の可動域が広がれば、腕を上に上げたり回すことができるようになり、膝関節の可動域が広がれば、深く屈めたり伸ばせるようになります。
このように、関節の可動域が広がることで、日常動作が楽になったり、スポーツ時の動きが自由になったりします。
また、可動域の改善は関節の痛みの軽減にもつながり、関節が硬く可動域が狭いと、動きの際に痛みを感じることがありますが、可動域が広がれば、そうした痛みが和らぐのです。
このように、タイ古式マッサージのセンに沿った施術は、筋肉と結合組織を柔軟にして関節の可動域を広げる効果があります。
日常生活や趣味、スポーツなどの活動の幅が広がり、健康的な生活に寄与するでしょう。
深いリラクゼーション効果
タイ古式マッサージでは、経絡(セン)と呼ばれる身体の通り道に沿って指圧やストレッチが行われます。
これにより、筋肉の緊張が和らぎ、血行が改善されます。
さらに、自律神経系のバランスも整えられるため、心の安定にもつながるのです。
このような身体的・精神的なリラックス状態は、深い休息をもたらします。
マッサージを受けている間は、ゆっくりと心身ともに落ち着いていき、ストレスから解放されていきます。
また、リラクゼーション効果は長時間持続することが特徴です。
マッサージ後も心身のバランスが保たれ、日常生活においても肩の力が抜けた軽やかな状態が続きます。
このような深いリラクゼーション効果は、日常的な疲労の蓄積を防ぎ、ストレス管理に役立ちます。
ひいては、免疫力の向上や、生活の質の向上にもつながるのです。
さらに、リラックスした状態は集中力の向上にも寄与し、マッサージ後は頭が冴えわたり、仕事や勉強などに取り組みやすくなります。
このように、タイ古式マッサージのセンに沿った施術は、心身ともに深いリラクゼーション効果を生み出し、健康で充実した生活に大きく貢献するのです。
タイ古式マッサージの歴史と哲学とは?
タイ古式マッサージの歴史と哲学とは?以下の通りです。
・古代の起源
・仏教に基づく哲学
・伝統的な専門家による施術
こちらを順にご紹介します。
古代の起源
タイ古式マッサージの基盤となる思想は、インドの伝統医学「アーユルヴェーダ」に由来しています。
アーユルヴェーダでは、人体に経絡(セン)と呼ばれる通り道があり、そこに生命エネルギーが流れていると考えられています。
これらの考えはタイに伝わり、やがてタイ王国の宮廷医療の一部としてタイ古式マッサージが発展していきました。
7世紀以降、仏教の影響も受けながら、より体系化されていきます。
特に、15世紀のアユタヤ王朝時代には、タイ古式マッサージの技術が大きく進化しました。
当時の王室医療では、マッサージ、ハーブ療法、呼吸法などが組み合わされ、統合的な治療アプローチが採用されていたのです。
この時期の宮廷医療は、身体的な症状だけでなく、心の健康にも着目していました。
つまり、タイ古式マッサージには、単なる肉体的なアプローチだけでなく、心の健康を高める精神的な側面もあったのです。
このように、タイ古式マッサージの歴史は古代インドのアーユルヴェーダに端を発し、仏教の影響を受けながら発展してきました。
その根底にある哲学は、心身一体の健康観に基づいているのが特徴です。
仏教に基づく哲学
仏教では、人間は「身」「心」「魂」の三つの要素から成り立っていると考えられています。
これらが調和し、バランスのとれた状態が健康な状態だと捉えられます。
タイ古式マッサージもまた、この「身心一如」の考えに基づいています。
単に筋肉を解するだけでなく、精神的なリラクゼーションや内なる調和を促すことが目的とされるのです。
さらに、仏教では「無我」の概念が重要視されています。
これは、自我にとらわれずに物事を受け止めることで、本来の自然な状態に近づくことができるという考え方です。
タイ古式マッサージの施術でも、マッサージ師は自我を捨て去り、お客様の身体と心の状態を感じ取ることが求められます。
そうすることで、お客様の内面の調和を促すことができるのです。
また、仏教の中核をなす「四つの崇高な心」(慈悲、愛、 喜び、捨)もタイ古式マッサージの精神性に通じています。
施術を行う際には、これらの心性を持つことが大切視されるのです。
このように、タイ古式マッサージの哲学的基盤には、仏教の思想が色濃く反映されています。
身心一如、無我の境地、四つの崇高な心など、仏教の教えがマッサージの実践と深く融合しているのが特徴といえるでしょう。
伝統的な専門家による施術
伝統的なタイ古式マッサージの施術者は「モー・プラー」と呼ばれる高度な技術を持った専門家です。
彼らは、幼い頃から師匠の元で厳しい修行を重ね、マッサージの技術だけでなく、解剖学や生理学、ハーブ療法などの知識も習得します。
施術に際しては、クライアントの体調や症状を丁寧に問診し、体の状態を手で確認しながら、適切な施術方法を判断します。
指圧や関節の操作、ストレッチなど、様々な手技を組み合わせて使い分けるのが特徴です。
また、呼吸法やハーブの使用など、心身の調和を促す要素も取り入れられます。
お客様の気持ちに寄り添い、身体の状態に合わせて的確な施術を行うことが重要視されているでしょう。
このように、伝統的なタイ古式マッサージでは、長年の修練を積んだ専門家による全人的な施術アプローチがなされます。
単なる肉体的なケアにとどまらず、心の健康をも高めることが目的とされているのが特徴といえます。
近年では、このような伝統的な施術方法を学び、さらに発展させようという動きも見られます。
タイ古式マッサージの魅力は、その歴史と哲学に根ざした専門性にあると言えるでしょう。
タイ古式マッサージの魅力とは?
タイ古式マッサージの魅力とは?以下の通りです。
・身体の柔軟性を高める
・医療分野での活用
・全身のバランスを整える
・自然治癒力の活性化
・精神的ストレスも和らぐ
こちらを順にご紹介します。
身体の柔軟性を高める
タイ古式マッサージでは、関節の可動域を広げるためのストレッチ技術が駆使されます。
足や腕、背骨などの主要な関節を中心に、丁寧に伸ばしていくのが特徴です。
関節の可動域が広がることで、体の歪みが改善され、姿勢が良くなります。
また、筋肉も柔らかくなり、動きやすくなり、日常生活における身体的な制限が緩和されるため、スポーツ時の怪我予防にも効果的です。
さらに、タイ古式マッサージは筋膜を緩めることでも知られています。
筋膜とは筋肉をつつむ膜状の組織で、こうした筋膜の硬さが緩和されると、より自由な動きが可能になります。
これらの効果により、身体が全体的に柔軟になり、スムーズな動きが取れるようになり、関節痛の緩和や、スポーツパフォーマンスの向上にも寄与するでしょう。
日頃の疲労や筋肉の凝りもほぐされ、心地よい爽快感が得られます。
タイ古式マッサージが身体の柔軟性を高める魅力は、多くの人々を惹きつける大きな要因となっています。
医療分野での活用
タイ古式マッサージは筋肉の痛みや関節痛の緩和に効果的です。
筋肉の緊張や関節の可動域の改善を促すため、慢性的な痛みの軽減に役立ちます。
特に腰痛や肩こりなどの症状に対して有効とされています。
さらに、タイ古式マッサージは神経系の調整にも貢献します。
手技による刺激が末梢神経を活性化し、血行を促進させるため、しびれや麻痺の改善にも期待でき、リウマチやパーキンソン病などの神経疾患の症状緩和にも活用されているでしょう。
呼吸器系への効果も注目されています。
胸郭の可動性を高め、肺活量を改善するため、喘息などの呼吸器疾患の予防や症状管理に貢献します。
このように、タイ古式マッサージは筋骨格系、神経系、呼吸器系など、様々な分野での医療応用が期待されています。
医療分野での魅力は、まさにタイ古式マッサージの高い有効性にあると言えるでしょう。
全身のバランスを整える
タイ古式マッサージでは、経絡と呼ばれる経穴や筋肉、関節など、体の様々な部位をバランス良く調整していきます。
手技の組み合わせによって、全身の調和を図るのが特徴です。
例えば、筋肉の緊張をほぐすことで関節の可動域が改善され、呼吸の深さが増し、同時に、血行が促進されることで、老廃物の排出が活発になるでしょう。
このように、タイ古式マッサージは体の部位間の相互作用を引き出し、全体のバランスを整えていきます。
その結果、身体の柔軟性や姿勢の改善、ストレス解消などが得られるでしょう。
さらに、疲労の回復や免疫機能の向上にも寄与します。
全身のバランスが保たれることで、日常生活での動作がスムーズになり、スポーツパフォーマンスの向上にも役立ちます。
また、心理的な面でも、リラックス効果や前向きな気持ちの醸成などが期待できるでしょう。
このように、タイ古式マッサージは身体の様々な側面にアプローチし、全身の調和を取り戻すことができます。
まさに、全身のバランスを整える魅力が、多くの人々を虜にしているのです。
自然治癒力の活性化
タイ古式マッサージの手技は、身体の様々な経絡や筋肉、関節に働きかけ、体内のバランスを整えていきます。
この過程で、血行の促進や自律神経の調整など、自然治癒力を高める効果が得られるのです。
例えば、筋肉の緊張をほぐすことで血行が改善され、酸素や栄養の供給が高まるでしょう。
また、リンパの流れを促進することで、老廃物の排出が活性化されます。
さらに、経絡に沿った手技は、内臓機能の調整にも寄与します。
このように、タイ古式マッサージは体の中から自然治癒力を引き出し、様々な症状の改善や予防に役立ちます。
慢性的な痛みや疲労、ストレス、不眠など、さまざまな健康課題に対して効果が期待できるでしょう。
特に、加齢に伴う身体機能の低下を抑える効果も注目されています。
さらに、タイ古式マッサージは心理的な側面にも好影響を及ぼします。
リラックス効果によってストレスが軽減され、精神的な安定が得られ、これも自然治癒力の高まりに寄与しているのです。
このように、タイ古式マッサージの大きな魅力は、体の内部から自然治癒力を引き出し、心身の健康維持に貢献することにあります。
精神的ストレスも和らぐ
タイ古式マッサージでは、筋肉の緊張をほぐすだけでなく、自律神経系のバランスを整えることで、心の安らぎにもアプローチします。
手技を通じて、交感神経から副交感神経への切り替えが促されるのです。
例えば、背中や首肩部分のマッサージは、ストレスによる筋肉の凝りをほぐし、血行を改善し、同時に、リラックス効果を生み出すことで、精神的な緊張も和らいでいきます。
また、足裏のツボを刺激するフットマッサージは、心身のバランスを整えるのに極めて効果的です。
足裏にはさまざまな経絡が集まっているため、全身の調和につながるのです。
さらに、タイ古式マッサージには伝統的なハーブの香りが付随しており、これも精神の安らぎに寄与しています。
ラベンダーやペパーミントなど、心地よい香りが脳に働きかけ、リラックス効果を高めるのです。
このように、タイ古式マッサージは身体的な緊張と同時に、精神的なストレスも和らげることができ、心身ともに調和のとれた状態を取り戻すことで、日常生活での活力や集中力の向上も期待できるのです。
まさに、タイ古式マッサージの大きな魅力は、ストレスのない心地よい状態を提供し、心身の健康を高めることにあるのです。
「セン」とは
タイ古式マッサージをおこなうときは、「セン」を意識する必要があります。この「セン」はとても重要なものですが、具体的にはどういったものなのでしょうか。まずはタイ古式マッサージにおけるセンの概要について、詳しく確認してみましょう。
エネルギーライン(エナジーライン)
センとは、体のエネルギーが通っていると考えられているラインのことです。体にエネルギーのラインがあるというのは、インド医学の考え方に基づいたものです。タイ古式マッサージがこの考え方を取り入れているのは、インドを起源とするヨガの影響を大きく受けているためだといえます。
主要な10本のセンを含め72000本ものエネルギーラインがある
センは主要なものが10本あり、全部で72000本もあるといわれています。体の症状に合わせて効果的にセンを刺激することで、体の不調を効率的に改善していくことができます。まずは主要な10本のセンを覚え、徐々に自分の体にとくに合ったセンをおさえていくとよいでしょう。これほどたくさんのセンの中には、必ず自分の体の症状の改善に合ったラインがあるはずです。
エネルギーラインとは
センとは体のエネルギーラインのことです。エネルギーラインとは具体的にどういったものなのでしょうか。タイ古式マッサージに取り組むなら、センの役割をしっかりおさえておくのが必要不可欠だといえます。タイ古式マッサージにおけるセンについて、より詳しくみていきましょう。
生命エネルギーが流れる経路
センは生命のエネルギーが流れる経絡のことです。それぞれ場所が異なり、刺激した場合にどういった効果が得られるのかについても異なります。タイ古式マッサージはではそれぞれの役割をしっかり理解して刺激を与えていくことで、大きな効果を得ることができます。
目には見えない「気」の通り道
センは目に見えない「気」が通っている場所であり、セン自体も目に見えるものではありません。しかし、実際にセンを刺激すると体調が改善することから、古くから多くの人の健康を支えるものとして活用されてきました。
10本の「セン」
センにはかなりたくさんの種類がありますが、その中でもとくに重要なのが10本のセンです。センについて知りたいなら、まずはこの10本のセンについて覚えておくとよいでしょう。ここでは10本のセンについてみてみます。
主要な10本のエネルギーライン
センとして重要な10本のエネルギーラインは以下のとおりです。センによって、ラインが続いている場所や効果も大きく異なっています。それぞれのセンについて、場所と対応できる症状について確認しましょう。
*セン・スマナ (Sen Summana)
セン・スマナは、舌先からのどや胸を通り、みぞおちまで続いているラインです。ぜんそくや気管支炎、心臓病などに効果があるとされています。
*セン・イッタ (Sen Ittha)
セン・イッタは、左の鼻孔から頭頂部や背中を通り、臀部から脚外側を経てへその左横まで続くラインです。鼻の不快感や肩こり、腹痛などさまざまな症状に効果を発揮します。
*セン・ピンカラ (Sen Pingkhala)
セン・ピンカラは、セン・イッタをそのまま右側にうつしたラインです。セン・イッタ同様、鼻の不快感や肩こり、腹痛などいろいろな症状に効くセンです。
*セン・カラタリ (Sen kalayhari)
セン・カラタリは、上下それぞれに分かれています。上側のセンはへそから胸部を通り、腕の内側を抜けて指先にいたります。そして下側のセンはへそから両脚の内側をとおり、足裏を通って脚の指先へと到達します。消化不良や背中の痛み、脚の麻痺に効果的です。また、精神障害や不整脈などに対しても効果があります。
*セン・サハサランシ (Sen Sahatsarangsi)
セン・サハサランシは、右目からのどを通り、左の腹部や脚の外側、足底に向かってへその下に続くセンです。顔面麻痺や発熱、白内障などの症状に対して働きかけをおこないます。
*セン・タワリ (Sen Thawari)
セン・タワリは、セン・サハサランシを右側にうつしたセンです。セン・サハサランシと同じく、顔面麻痺や発熱、白内障などいろいろな症状に対して効果を発揮します。
*セン・ラウサン (Sen Lawusang)
セン・ラウサンは、左耳からのどや胸部の左側を通り、みぞおちに向かうセンです。難聴や咳、歯痛、胃腸障害などに効果があります。
*セン・ウランガ (Sen Uragka)
セン・ウランガは、セン・ラウサンの右側にあたるセンです。セン・ラウサンと同様に、難聴や咳、歯痛、胃腸障害などを改善するのに役立ちます。
*セン・ナンタクラワット (Sen Nathakrawat)
セン・ナンタクラワットは、さらに2つに分かれています。1つ目のセン・シキ二はへそから尿道を通って尿道口に向かうセンです。また、セン・スクマンはへそから結腸を通り、肛門へ向かいます。これらのセンには、ヘルニアや生理不順、下痢などを改善する効果が期待できます。
*セン・キチャナ (Sen Khitchanna)
セン・キチャナは、男女によってそれぞれ異なります。男性の場合はセン・ピタクンで、へそから陰茎に続いています。また、女性の場合はセン・キチャとなり、へそから子宮を通り膣へつながっています。セン・ナンタクラワットと同じく、ヘルニアや生理不順、下痢などに効くとされています。
10本のラインのうち半数以上は足にある
10本の主要なセンは、半数以上が足にあります。そのため、タイ古式マッサージにおいては、足からマッサージを始めるのが基本です。足からマッサージをおこなっていくことにより、効率的に体に働きかけができます。センがしっかりと刺激されれば、その分高い効果を発揮できるはずです。
タイ古式マッサージの大まかな流れや考え方
タイ古式マッサージをおこなうときは、センにそって揉み進めていきます。タイ古式マッサージはタイの伝統医学に基づいたものです。そのため、タイの伝統医学で大切にされている「土(地)、火、風、水」の4つのエレメントとともにセンを重要視して施術をおこなっていきます。
センはタイ古式マッサージの要となるエネルギーのライン
タイ古式マッサージをおこなうときは、センについてしっかりと理解しておく必要があります。センを意識してマッサージをおこなうことで、その人の体の症状を効果的に改善していくことができます。マッサージを受ける側になる場合でも、センの位置をよく理解しておけば自分の体の状態をよりしっかりと把握することにつながるでしょう。センにはとてもたくさんの種類があるため、自分の体の状態に合わせてしっかりと刺激できれば、いつも困っている症状を楽に改善することもできます。タイ古式マッサージはタイでは医療として効果があると認められているため、とても高い効果が期待できるはずです。タイ古式マッサージを選ぶなら、体のセンを意識して効果的なマッサージになるように配慮しましょう。
まとめ
タイ古式マッサージの中心的概念「セン」には、10本以上の主要なセンが存在します。
それぞれのセンには固有の効能があり、経絡に沿ったマッサージによってバランスの取れた気の流れが促されます。
例えば、「真理(まり)線」は心の健康を司り、「生命(しょうみょう)線」は生命力を高め、「大乗(だいじょう)線」は全身の調和を図ります。
また「腰椎(ようつい)線」は腰痛緩和に、「頭頂(とうちょう)線」は頭痛改善に効果的です。
さらに「手の陽明大腸線」「足の陽明胃線」など四肢に沿ったセンもあり、それぞれ特定の症状改善に役立ちます。
センのバランスが崩れると、様々な不調を引き起こしますが、マッサージによって気の流れが整えられ、心身の健康が保たれます。
伝統的な知恵に基づく、タイ古式ならではの優れた効果が期待できるでしょう。
- 通信講座のSARAスクール編集部
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