傾聴力の意味とは?コミュニケーションの質を高める傾聴スキルを紹介
記事更新日:2024年6月11日コミュニケーション能力について考えたとき、説得力のある言葉や表現など、「話す力」に注目する人は多いかもしれません。しかし、話す力と同じくらい重要だといわれているのが、相手の話に注意深く耳を傾ける「傾聴力」です。傾聴力を身に付ければ、多くの言葉を重ねなくても、自然とスムーズなコミュニケーションがとれるようになるといわれています。
ここでは、傾聴することの大切さと、傾聴スキルを高めるための方法について、詳しく解説します。
目次
傾聴とは相手の気持ちに共感しながら聴くこと
「傾聴」は、英語で表すとActive Listening(アクティブ・リスニング)です。相手の話をただ受け身で聞くのではなく、内容を深く理解するために丁寧に耳を傾けることを指します。
傾聴の基本は、相手を受け入れることと相手の話に共感することです。人は誰でも素直に本心を打ち明けられるものではありません。しかし、相手の心に寄り添いながら傾聴することによって、相手が本当に話したいことを引き出しやすくなるのです。まずは、傾聴について理解するために知っておきたいことをご紹介します。
「聞く」と「訊く」と「聴く」の違い
「きく」という言葉には、大きく分けて「聞く」「訊く」「聴く」の3つの漢字が使われ、それぞれ意味が異なります。
- 聞く
- 「聞く」は、人の話や周りの音が、ただ耳に入っている状態です。その人が本当に伝えたいことや、話の真意に思いをめぐらせるものではありません。
- 訊く
- 「訊く」は、「答えを導き出すように質問する」といった意味合いで使われます。いつも訊く姿勢ばかりをとっていると、相手に萎縮や拒絶の気持ちを抱かせてしまうこともあるでしょう。
- 聴く
- 「聴く」は、会話の内容や音楽などに集中して耳を傾けるときに使われる言葉です。傾聴とは、その言葉に「聴」の字が用いられているように、相手の話を注意深く聴くことを指します。
耳・目・心を傾けて相手の話を聴く
「聴」という字は、耳や目、心という漢字で構成されているように、傾聴は、耳・目・心のすべてで聴くことが大切です。話の内容だけではなく、表情や仕草などに注目し、相手の心に寄り添いながら話を聴くようにしましょう。
傾聴力はカウンセラーにとっての必須スキル
カウンセリングとは、相手の悩みに寄り添いながら、相談者本人が解決に向けて動き出せるようにサポートをするものです。そのため、傾聴力は、カウンセラーにとって必要不可欠なスキルとされています。
なお、最近ではカウンセリングにとどまらず、ビジネスをはじめとするさまざまなシーンで、傾聴の重要性が注目されるようになってきました。
傾聴力を身に付けるメリットとは?
人とコミュニケーションをとる上で、傾聴力は非常に意義のあるものだといわれています。では、傾聴力を身に付けると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
相手の考えが理解しやすくなる
相手の話を集中して聴くことによって理解が深まり、誤解や思い込みを避けられるようになります。また、傾聴を意識した会話では、こちらの真剣さが相手にも伝わり、踏み込んだ内容まで話してもらえる可能性があります。
良好な信頼関係を築ける
自分の意見を真剣に聞いてくれる人には、誰もが好感を持つものです。傾聴力が高い人は、相手から「話しやすい」「信頼できる」と認識されるようになるでしょう。ビジネスでもプライベートでも、良好な信頼関係を築くことができるようになります。
客観的な判断ができるようになる
共感しながら傾聴すると、同じ物事でも立場が違えば見方が変わることに身に付けるようになります。一方的な思い込みがなくなり、現状に関して客観的な判断を下せるようになるはずです。
自分自身への理解も深まる
傾聴力が身に付くと、相手のことを理解できるのと同時に、自分自身への理解も深まります。普段、意識していない考え方の癖などは、自分ではなかなかわからないものです。相手の立場になって聴く傾聴を通して、自分を客観的に見つめ直すことができるともいわれています。
傾聴力を高めるには?
傾聴力は、ただ話を聞いているだけで身に付くものではありません。傾聴スキルを磨くには、日頃から下記のポイントを意識することをおすすめします。
相手の顔や目を見る
人の話を聴くとき、姿勢や仕草はとても大切です。相手に威圧感を与える腕組みなどの動作をしたり、視線をあちこちに向けたりしながら会話をしていると、相手に「話の内容に興味がないのだな」と不信感を抱かれてしまいます。話を聴くときはしっかりと相手に体を向けて、正面から顔や目を見るようにしましょう。
やわらかい表情を心掛ける
相手の話を真剣に聴こうとすると、つい険しい顔になってしまうことがあります。険しくこわばった表情を見ると、相手は緊張して話をしにくくなってしまうものです。安心して心を開いてもらえるように、会話のときは意識的にやわらかい表情をキープするようにします。
話をまとめて言い換える
傾聴のテクニックのひとつに、相手の話の内容をまとめて、同じ意味を持つ別の言葉に言い換えるという方法があります。例えば、相手の「最近、帰りが遅くて大変なんです。寝る時間もあまりないのでつらいです」という相談に対し、「睡眠不足だと全然疲れがとれないですよね」と、同調しながら返すといった具合です。別の表現に言い換えることで、「あなたの話を理解しています」ということが、相手に伝わりやすくなります。
適度にあいづちを打つ
話を聴くときには「うんうん」「はい」「そうなんですか」など、適度にあいづちを打ちましょう。あいづちが相手に対する「話をきちんと聴いています」というメッセージになり、会話のテンポも良くなります。あいづちとともにうなずきを加えたり、合間に的確な質問を投げかけたりするのも効果的です。
沈黙をおそれない
会話の途中で相手が沈黙すると、つい「何か話さなくては」と焦ってしまいがちです。しかし、沈黙しているとき、相手は「何を話そうか」「どうやって表現しようか」など、考えを頭の中でめぐらせている可能性があります。沈黙をおそれずに、人の話を最後までしっかり聴く努力をしましょう。
また、相手が何も言っていないのに、「それはつまりこういうことですよね」などと決めつけて話を続けることも禁物です。
実践しやすい傾聴テクニック
ここからは、傾聴力を高めるための具体的なテクニックをご紹介します。傾聴テクニックを活用し、相手との信頼関係を構築していきましょう。
ミラーリング
ミラーリングとは、鏡のように相手と同じ動きをすることです。姿勢や表情、仕草、声のトーンなどを相手と同調させ、親近感や安心感を与えるテクニックです。ただし、わざとらしくなると相手に不信感を持たれてしまうため、少しタイミングを外したり、回数を制限したりするといった工夫をしましょう。
バックトラッキング
バックトラッキングとは、一般的に「おうむ返し」と呼ばれる方法です。相手が話した内容と同じ言葉を繰り返すことで、相手への強い共感を示します。バックトラッキングも、何度も繰り返すと相手がからかわれているような気分になってしまうため、頻度に注意します。
自己開示法
自己開示法とは、相手の話を受け止めた上で、自分の経験や考え方、感情などを述べる方法です。相手の話を聴くばかりではなく、適度に自分のことを知ってもらうようにすると、お互いの心の距離がより縮まります。さらに、相手の発言に対して似たような体験を話すことで、好印象を持ってもらえることもあります。
傾聴する上で注意すべきNG行動とは?
傾聴力を身に付けたい人は、次のような行動には気を付けましょう。NG行動によって、せっかく構築した信頼関係が崩れてしまうこともあります。
相手の話を途中でさえぎる
会話の途中で言いたいことを思い付いたり、話の続きがわかったりしても、相手の言葉をさえぎってはいけません。まずは相手を受け入れ、最後まで話を聴くことが大切です。話の腰を折るように口を挟んでも、相手に与えるのは不快感だけです。
求められていないのにアドバイスをする
傾聴とは、相手が伝えたいことを真摯に受け止め、共感しながら話を聴くことです。たとえ正しいと思うことであっても、求められていないのに意見やアドバイスをするのはやめましょう。
一方的な評価や判断をする
アドバイスと同様に、評価やジャッジもNGです。自分の感情を整理しながら話をしているときに一方的な評価を下されては、誰しもが嫌な気持ちになってしまいます。「上から目線で偉そう」と、信頼を失ってしまいかねません。
相手の考えや人格を否定する
傾聴で最も避けるべきなのは、相手の考え方や人格を否定することです。自分とは違う意見だったとしても、話に集中して耳を傾けましょう。頭ごなしの否定や決めつけは、「この人に話をしても無駄だ」と、相手の心を閉ざしてしまいます。
傾聴スキルを高めて良好なコミュニケーションを目指そう
傾聴力が身に付けば、相手の気持ちに寄り添いながら、その場に応じたコミュニケーションができるようになります。仕事や日常生活など、あらゆるシーンで周りからの信頼度がアップする可能性も高まります。
まずは、会話のときに相手と真摯に向き合い、耳だけでなく目や心でも「聴く」ことを心掛けるようにしましょう。人と組織の課題解決に本当に役立つ情報を発信するコラム(アーティエンス株式会社)
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