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海外発酵食品の保存性と世界への広がり

発酵食品は、世界中で幅広く親しまれています。国によって発酵食品の種類や特徴は、大きく異なります。海外の発酵食品は、日本でも親しまれているものもたくさんあります。なかには発酵食品であることを知らずに食べているものもあるかもしれません。発酵食品について理解を深めるには、海外の発酵食品についてもしっかり押さえておいたほうがよいでしょう。

今回は、海外の発酵食品の種類や特徴について紹介します。発酵食品の種類や特徴を押さえて、さらに発酵食品を楽しめるようにしましょう。

海外の発酵食品って?種類や特徴について紹介

世界の発酵食品の歴史

発酵食品は、古代から人類の食生活に深く関わってきました。 保存性が高く、栄養価も豊富なため、多くの文化圏で重宝されてきました。 ここでは、発酵食品の歴史を探り、メソポタミア文明でのワイン醸造の始まりや、発酵食品が世界中に普及した経緯について詳しく解説します。

メソポタミア文明におけるワイン醸造の始まり

発酵食品の歴史を語る上で、メソポタミア文明は欠かせません。 紀元前6000年頃、現在のイラク地域に位置するメソポタミアで、ワイン醸造が始まりました。 この地域は、チグリス・ユーフラテス川の流域にあり、肥沃な土地と温暖な気候がワインの原材料となるブドウの栽培に適していました。

ワインの発見と発酵のプロセス

ワインの発見は偶然とされています。ブドウを保存するために壺に入れておいたところ、自然発酵が起こり、アルコール飲料が生成されたのです。 これがワインの始まりとされます。 発酵は、酵母菌がブドウの糖分をアルコールと二酸化炭素に変えるプロセスです。 このプロセスが発見されて以来、ワインはメソポタミア文明の重要な産物となり、宗教儀式や医療、日常生活で広く利用されました。

文献に見るワイン醸造の記録

メソポタミアの楔形文字で記された文献には、ワインの製造方法や貯蔵方法が詳細に記されています。 これらの記録から、当時の人々がワイン醸造の技術を高度に発展させていたことが伺えます。 また、ワインは交易の重要な品目でもあり、周辺地域との文化交流を促進しました。

発酵食品の保存性とその世界的普及

発酵食品は、その優れた保存性から古代の食生活に欠かせない存在でした。 保存性が高まることで、食糧を長期間にわたって安全に保存できるため、多くの地域で発酵食品が作られ、広まっていきました。

発酵食品の基本的な保存メカニズム

発酵は、微生物が食品中の糖分やタンパク質を分解する過程で起こります。 この過程で生成される酸やアルコールは、食品を腐敗させる有害な微生物の増殖を抑制します。 例えば、乳酸菌による発酵では乳酸が生成され、食品が酸性になることで、病原菌や腐敗菌の繁殖を防ぎます。 このように、発酵は食品の保存性を高める効果があるのです。

古代文明における発酵食品の利用

古代エジプトでは、パンやビールが発酵食品として一般的でした。 パンは、酵母菌を利用した発酵によって膨らみ、柔らかく風味豊かなものとなります。 ビールは、大麦を発酵させて作られ、飲料としてだけでなく、栄養源としても重宝されました。 これらの発酵食品は、エジプトの神聖な儀式や日常の食卓に欠かせない存在でした。

発酵食品の広がりと交易

発酵食品の技術は、交易を通じて世界中に広まりました。 シルクロードを通じて、中国の発酵茶や日本の味噌、ヨーロッパのチーズなどが各地に伝わり、それぞれの地域で独自の発展を遂げました。 発酵食品は、保存性が高いことから長距離の交易にも適しており、各地の文化交流を促進する役割も果たしました。

発酵食品の現代への影響

現代でも、発酵食品は世界中で愛されています。 ヨーグルト、キムチ、サワークラウト、テンペなど、多種多様な発酵食品が日常の食卓に並びます。 これらの食品は、健康志向の高まりと共に、その栄養価や健康効果が再評価され、再び注目を集めています。 発酵食品の持つ長い歴史と、その保存性や健康効果は、現代の食生活においても重要な役割です。

発酵に関わる主要な菌類

発酵食品は、人類の食文化に深く根ざしており、その製造には様々な微生物が関わっています。 特に重要なのが酵母菌と乳酸菌です。 これらの菌類は、食品の風味や栄養価を向上させ、保存性を高める役割を果たしています。 ここでは、酵母菌と乳酸菌の役割と影響について詳しく解説していきます。

酵母菌の役割とその影響

酵母菌は、発酵食品の製造において欠かせない微生物です。 主に糖分をアルコールと二酸化炭素に分解する働きを持ち、そのプロセスが多くの発酵食品や飲料の基盤となっています。

酵母菌の種類と機能

酵母菌には数多くの種類が存在し、それぞれが異なる発酵プロセスに特化しています。 この酵母菌は、糖分を二酸化炭素とアルコールに変えることで、パンを膨らませる役割を果たします。 以下に、主な酵母菌の種類とその機能について詳しく解説します。 サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae) サッカロマイセス・セレビシエは、パンやビール、ワインの製造に利用される代表的な酵母菌です。 この酵母は、糖分をアルコールと二酸化炭素に分解する能力を持ち、アルコール発酵を行います。 パンの発酵では、この二酸化炭素が生地を膨らませ、ふっくらとした食感を生み出します。 また、ビールやワインの発酵では、アルコールが生成されることで、独特の風味と香りが生まれます。 カンジダ・ミレリ(Candida milleri) カンジダ・ミレリは、サワードウブレッド(天然酵母パン)の発酵に使用される酵母菌です。 この酵母菌は、酸性の環境でも活発に活動する能力があり、乳酸菌と共生してサワードウの独特な酸味と風味を作り出します。

酵母菌の発酵プロセス

酵母菌の発酵プロセスは、主にアルコール発酵と呼ばれます。 このプロセスでは、酵母菌が糖分を分解し、アルコールと二酸化炭素を生成します。 アルコール発酵の詳細なプロセスを解説していきます。 グルコースの分解 酵母菌は、まずグルコースなどの単糖を分解し、ピルビン酸という化合物を生成します。 この過程は解糖系と呼ばれ、多くのエネルギーを必要とします。 アルコールと二酸化炭素の生成 ピルビン酸は、さらに分解されてアルコール(エタノール)と二酸化炭素に変わります。 この変換は、酵母菌の酵素によって触媒されます。アルコール発酵の副産物として生成される二酸化炭素は、パンの生地を膨らませ、飲料には泡を生み出します。

酵母菌の影響と利用例

酵母菌の働きは、多岐にわたる発酵食品や飲料の製造に不可欠です。 具体的な利用例は、以下の通りです。 パンの発酵 パンの発酵には、前述のサッカロマイセス・セレビシエが用いられます。 この酵母菌は、生地に含まれる糖分を分解し、二酸化炭素を生成することで生地を膨らませます。 これにより、ふんわりとした食感と豊かな風味が生まれます。 ビールの醸造 ビールの醸造では、麦芽糖が酵母菌によってアルコールと二酸化炭素に変えられます。 発酵によって生成されるアルコールがビールの特徴的な風味を生み出し、二酸化炭素が炭酸ガスとなって爽やかな飲み口をもたらします。 ワインの醸造 ワインの醸造では、ブドウに含まれる糖分が酵母菌によって発酵され、アルコール飲料が生成されます。 発酵の過程で生成されるエステルやフェノール化合物が、ワインの複雑な香りと味わいを形成します。

乳酸菌の特徴と利用法

乳酸菌は、発酵食品の製造においてもう一つの重要な微生物です。 これらの菌は、糖分を乳酸に変える乳酸発酵を行い、食品の保存性を高め、風味を向上させる役割を果たします。

乳酸菌の種類と特性

乳酸菌には多くの種類があり、それぞれが異なる発酵プロセスや特性を持っています。 主要な乳酸菌の種類とその特性について詳しく解説します。 ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus) ラクトバチルス・ブルガリクスは、ヨーグルトの製造に使用される代表的な乳酸菌です。 この菌は、乳糖を乳酸に変える能力があり、ヨーグルトに特有の酸味を与えます。 また、ヨーグルトの発酵過程で生成される乳酸は、腸内環境を整え、消化を助ける効果があります。

ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) ストレプトコッカス・サーモフィルスも、ヨーグルトの発酵に使用される乳酸菌です。 この菌は、ラクトバチルス・ブルガリクスと共生して発酵を行い、ヨーグルトの風味とテクスチャを形成します。

乳酸菌の発酵プロセス

乳酸菌の発酵プロセスは、糖分を乳酸に変える乳酸発酵と呼ばれます。 このプロセスは、食品の保存性を高めるとともに、風味や栄養価を向上させる効果があります。 乳酸発酵の詳細なプロセスは、以下の通りです。 糖分の分解 乳酸菌は、まず糖分を取り込み、これをピルビン酸に変換します。 この過程は、酵母菌のアルコール発酵と同様に解糖系と呼ばれます。 乳酸の生成 ピルビン酸は、さらに乳酸に変換されます。 この変換は、乳酸菌の酵素によって触媒されます。 乳酸の生成により、食品は酸性環境となり、有害な微生物の増殖が抑制されます。

乳酸菌の影響と利用例

乳酸菌の働きは、多くの発酵食品の製造に不可欠です。 具体的な利用例は、以下の通りです。 ヨーグルトの製造 ヨーグルトは、乳酸菌によって発酵された乳製品です。 ラクトバチルス・ブルガリクスとストレプトコッカス・サーモフィルスが共生して発酵を行い、乳糖を乳酸に変えることで、ヨーグルト特有の酸味とクリーミーなテクスチャが生まれます。 キムチの発酵 キムチは、乳酸菌によって発酵された韓国の伝統的な発酵食品です。 白菜や大根などの野菜が塩漬けされ、乳酸菌が発酵を行うことで、独特の風味と栄養価が高い食品が生まれます。 キムチに含まれる乳酸菌は、腸内環境を整え、消化を助ける効果があります。 サワークラウトの発酵 サワークラウトは、キャベツを乳酸発酵させたドイツの伝統的な発酵食品です。 キャベツを塩漬けし、乳酸菌が発酵を行うことで、酸味のある保存食品が作られます。 サワークラウトは、ビタミンCや食物繊維が豊富で、健康維持に役立ちます。

各国の代表的な発酵食品

発酵食品は、その土地の風土や文化に根ざした伝統的な食品です。 各国でさまざまな発酵食品が生まれ、それぞれの独特な風味と栄養価が多くの人々に愛されています。 ここでは、中国、フィリピン、スウェーデン、ドイツ、ヨーロッパ全般の代表的な発酵食品について詳しく解説します。

中国発祥のメンマ

メンマは、中国発祥の伝統的な発酵食品であり、竹の若芽を発酵させたものです。 日本ではラーメンのトッピングとしてもおなじみですが、その歴史と製造方法について詳しく見ていきましょう。

メンマの歴史と文化

メンマの歴史は古く、中国では「笋干(すんがん)」として知られています。 竹の若芽を使ったこの発酵食品は、長期間保存が可能であり、風味豊かな食材として重宝されてきました。 中国南部の温暖湿潤な気候は竹の生育に適しており、この地域でメンマが広く作られるようになりました。

メンマの製造方法

メンマの製造は以下の工程を経て行われます。 竹の若芽の収穫 新鮮な竹の若芽を収穫し、硬い外皮を取り除きます。 下茹で 竹の若芽を数時間茹でて柔らかくし、アクを抜きます。 発酵 茹でた若芽を塩漬けにし、数週間から数ヶ月間発酵させます。 この過程で乳酸菌が働き、独特の風味が生まれます。 乾燥 発酵が終わった若芽を乾燥させ、保存が効く状態にします。 乾燥することで、風味が凝縮されます。

メンマの利用法と栄養価

メンマは、そのまま食べるほか、煮物や炒め物、ラーメンのトッピングなど多用途に利用されます。 栄養価としては、食物繊維が豊富で、腸内環境の改善に役立ちます。 また、低カロリーであるため、ダイエット食品としても適しています。

フィリピンのナタ・デ・ココ

ナタ・デ・ココは、フィリピン発祥の発酵食品で、ココナッツウォーターを発酵させたものです。 その独特の食感と甘さから、デザートとして人気があります。

ナタ・デ・ココの起源と文化

ナタ・デ・ココは、19世紀のフィリピンで発明されました。 当時、ココナッツウォーターは大量に生産されていましたが、そのままでは日持ちしないため、発酵による保存方法が考案されました。 この発酵技術は、スペインから伝わった酢酸発酵技術を応用したものでした。

ナタ・デ・ココの製造工程

ナタ・デ・ココの製造は以下のように行われます。 ココナッツウォーターの準備 新鮮なココナッツウォーターを収穫し、濾過して不純物を取り除きます。 発酵 ココナッツウォーターに酢酸菌(Acetobacter xylinum)を加え、発酵を促します。 この過程でセルロースが生成され、ゲル状のナタが形成されます。 成形と切断 発酵が完了したナタを取り出し、適当な大きさに切断します。 洗浄と煮沸 切断したナタをよく洗い、煮沸して酸味を取り除きます。 シロップ漬け ナタを砂糖シロップに漬け込み、甘味を加えます。

ナタ・デ・ココの利用法と健康効果

ナタ・デ・ココは、フルーツポンチやアイスクリームのトッピングとして使用されます。 また、ナタ・デ・ココには食物繊維が豊富に含まれており、腸内環境の改善に効果的です。

スウェーデンのシュール・ストレミング

シュール・ストレミングは、スウェーデンの伝統的な発酵食品で、ニシンを塩漬けして発酵させたものです。 その強烈な匂いで有名ですが、スウェーデンでは古くから愛されている食品です。

シュール・ストレミングの歴史と文化

シュール・ストレミングの起源は16世紀に遡ります。 当時、塩は貴重品であり、少量の塩で長期間保存できる食品が求められていました。 シュール・ストレミングはそのニーズに応える形で誕生しました。

シュール・ストレミングの製造過程

シュール・ストレミングの製造は以下の手順で行われます。 ニシンの塩漬け 新鮮なニシンを塩水に漬け、数日間塩漬けにします。 発酵 塩漬けしたニシンを密閉容器に入れ、常温で数ヶ月間発酵させます。 この過程で乳酸菌が活動し、特有の強い匂いが発生します。 缶詰にする 発酵が完了したニシンを缶詰にし、出荷されます。

シュール・ストレミングの食べ方と風味

シュール・ストレミングは、開封時に非常に強い匂いを発するため、屋外での開封が推奨されます。 通常は、薄くスライスしてパンやクラッカーと一緒に食べられます。 塩味と酸味が強く、発酵による独特の風味があります。

ドイツのザウアークラウト

ザウアークラウトは、キャベツを乳酸発酵させたドイツの伝統的な発酵食品です。 その酸味とシャキシャキとした食感が特徴で、ドイツ料理には欠かせない存在です。

ザウアークラウトの起源と文化

ザウアークラウトの歴史は古く、紀元前にもさかのぼります。 保存性が高く、ビタミンCが豊富なため、長い航海をする船乗りたちの間で広まりました。 ドイツでは、ザウアークラウトはソーセージや肉料理の付け合わせとして定番です。

ザウアークラウトの製造工程

ザウアークラウトの製造は以下の手順で行われます。 キャベツの準備 新鮮なキャベツを細かく刻みます。 塩漬け 刻んだキャベツを塩で揉み、水分を引き出します。 発酵 塩漬けしたキャベツを密閉容器に詰め、数週間から数ヶ月間発酵させます。 乳酸菌が働き、酸味が生まれます。

ザウアークラウトの利用法と栄養価

ザウアークラウトは、ソーセージやハム、ポークなどと一緒に食べられることが多いです。 また、ビタミンCや食物繊維が豊富で、消化を助ける効果があります。

ヨーロッパ全般のピクルス

ピクルスは、ヨーロッパ全般で親しまれている発酵食品で、主に野菜を酢や塩水で漬け込んだものです。 特にキュウリのピクルスが有名ですが、さまざまな野菜が使われます。

ピクルスの歴史と普及

ピクルスの歴史は古代エジプトやギリシャにまで遡ります。 保存食としての価値が高く、長期間保存できるため、戦時中や長い航海で重宝されました。 ヨーロッパ全域で普及し、各国の食文化に取り入れられています。

ピクルスの製造方法

ピクルスの製造は以下のように行われます。 野菜の準備 新鮮な野菜を選び、洗浄して適当な大きさに切ります。 塩漬けまたは酢漬け 野菜を塩水または酢に漬け込みます。塩水の場合は乳酸発酵が進み、酢漬けの場合は即席ピクルスができます。 発酵または保存 塩漬けの場合は数週間発酵させ、酢漬けの場合はすぐに食べられます。

ピクルスの栄養価と健康効果

ピクルスは、ビタミンやミネラルが豊富で、腸内環境の改善に役立ちます。 また、低カロリーであるため、ダイエット食品としても適しています。

ヨーロッパのアンチョビ

アンチョビは、小さな魚を塩漬けして発酵させたヨーロッパの伝統的な発酵食品です。 その風味豊かな味わいと塩味が特徴で、多くの料理に利用されます。

アンチョビの起源と歴史

アンチョビの歴史は古代ローマに遡ります。当時から、魚を塩漬けにして保存する方法が確立されていました。 アンチョビは、地中海沿岸で広く作られ、ヨーロッパ全域に普及しました。

アンチョビの製造過程

アンチョビの製造は以下の手順で行われます。 魚の準備 新鮮な小魚(主にカタクチイワシ)を選び、内臓を取り除きます。 塩漬け 魚を塩で漬け込み、数週間発酵させます。 この過程で魚の酵素が働き、独特の風味が生まれます。 オイル漬け 発酵が完了した魚をオリーブオイルに漬け込み、保存します。

アンチョビの利用法と風味

アンチョビは、そのまま食べるほか、パスタやピザ、サラダのトッピングとしても利用されます。 また、ペースト状にしてソースやドレッシングに加えることで、料理の旨味を引き立てます。 以上、各国の代表的な発酵食品について詳しく解説しました。 これらの発酵食品は、それぞれの国の文化や食生活に深く根付いており、健康に良い効果をもたらす食品として世界中で愛されています。

発酵を利用した調味料と飲料

発酵は古くから食品の保存性を高めるだけでなく、その風味や栄養価を向上させるために利用されてきました。 特に調味料や飲料の分野では、発酵によって生まれる独特の味わいや香りが重要な役割を果たしています。 ここでは、タイのナンプラーとメキシコのテキーラという二つの発酵を利用した代表的な調味料と飲料について詳しく解説します。

タイのナンプラー

ナンプラーはタイの伝統的な調味料であり、魚を発酵させて作られる魚醤です。 その独特の旨味と風味は、タイ料理の味の決め手となります。

ナンプラーの起源と歴史

ナンプラーの起源は古代に遡り、アジア全域で魚を発酵させた調味料が使われていました。 特にタイでは、魚醤が料理に欠かせない調味料として広く利用されてきました。 ナンプラーは、タイの熱帯気候と豊富な魚資源を背景に発展し、その製造技術は代々受け継がれています。

ナンプラーの製造過程

ナンプラーの製造は以下の手順で行われます。 魚の準備 新鮮な魚(主に小魚やイワシ)を使用します。 魚は内臓を取り除かずにそのまま使います。 塩漬け 魚を塩と混ぜ合わせ、大きな樽に詰めます。 塩分は魚の重量の約30%程度が目安です。 発酵 塩漬けした魚を密閉容器に入れ、数ヶ月から1年以上発酵させます。 発酵が進むと、魚のたんぱく質が分解され、旨味成分が生成されます。 ろ過と熟成 発酵が完了した液体をろ過し、不純物を取り除きます。 その後、熟成させることで味わいが深まります。

ナンプラーの利用法と風味

ナンプラーは、タイ料理をはじめとする東南アジア料理に広く使われます。 その用途は多岐にわたり、炒め物、スープ、サラダ、ディップソースなどに利用されます。 また、ナンプラーは強い塩味と独特の魚の風味を持ち、料理に深い旨味を与えます。 少量を加えるだけで料理の味を引き立てるため、調理の際には適量を見極めることが重要です。

メキシコのテキーラ

テキーラはメキシコを代表する蒸留酒であり、アガベと呼ばれる植物を原料にして発酵・蒸留されます。 その製造方法と独特の風味で世界的に愛される飲料です。

テキーラの起源と歴史

テキーラの起源は16世紀に遡り、スペインの征服者たちが蒸留技術をメキシコにもたらしたことに始まります。 現地の先住民は、アガベから得られる発酵飲料をすでに楽しんでいましたが、蒸留技術の導入によって現在のテキーラが誕生しました。 メキシコのハリスコ州とその周辺地域がテキーラの主な生産地として知られています。

テキーラの製造過程

テキーラの製造は以下の手順で行われます。 アガベの収穫 アガベの中心部分(ピニャ)を収穫し、外皮を取り除きます。 ピニャは8〜12年の成長期間を経て収穫されます。 蒸しと搾汁 ピニャを蒸して柔らかくし、その後搾汁してアガベジュースを抽出します。 発酵 アガベジュースに酵母を加えて発酵させます。 この過程で糖分がアルコールに変わり、発酵液が生成されます。 蒸留 発酵液を蒸留器で二回蒸留し、アルコール度数を高めます。 これにより、テキーラの原酒が得られます。 熟成 テキーラを木樽に入れて熟成させます。 熟成期間により、ブランコ(未熟成)、レポサド(短期熟成)、アネホ(長期熟成)などに分類されます。

テキーラの種類と風味

テキーラは、熟成期間や製造方法によりいくつかの種類に分けられます。 ブランコ 蒸留後すぐに瓶詰めされるため、アガベのフレッシュな風味が楽しめます。 レポサド 数ヶ月から1年程度樽で熟成され、まろやかな風味と香りが加わります。 アネホ 1年以上の長期熟成により、深い色合いと複雑な風味が特徴です。 テキーラは、ショットで飲むほか、カクテルのベースとしても人気が高いです。 特に、マルガリータやテキーラサンライズなどのカクテルは世界中で親しまれています。 発酵を利用した調味料と飲料は、その独特の風味と深い味わいで料理や飲み物に新たな次元を加えます。 ナンプラーとテキーラは、それぞれの文化と伝統を反映し、多くの人々に愛され続けています。

世界の発酵菌

発酵食品については、日本では麹を使用する方法が主流でした。そのため、伝統的な発酵食品はすべて麹を使用して作られています。世界においては、発酵のために使用される菌や酵母にはさまざまな種類があります。ここでは、世界で使用されている発酵菌や酵母の種類について説明します。

酵母菌

世界の発酵食品をみてみると、酵母菌を使って作られているものも多いです。たとえば、ワイン酵母は世界で最も古い発酵食品であるワインを作るためのものです。また、ビール酵母もワイン同様に昔からあるもので、ビールを作るために欠かせない存在です。さらに、イースト菌は、紀元前3500年頃の古代エジプトから使用されてきました。パン作りにおいて必ず必要とされる酵母菌です。

乳酸菌

発酵を進めるための菌としては、乳酸菌も忘れてはいけません。乳酸菌は、日本ではなく海外で発祥したものです。乳酸菌は、ヨーグルト、チーズ、サワークリームなどの乳製品を作るために欠かせない存在です。現在でも多くの場面で乳酸菌が使用されています。乳酸菌の種類は非常に多く、種類によっても異なる働きをするのが大きな特徴です。

世界の発酵食品

世界の発酵食品としては、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。私たちも日本でよく食べているもののなかにも、実は海外の発酵食品であるものも多く含まれています。ここでは、世界の発酵食品の種類について詳しくチェックしておきましょう。

メンマ(中国)

メンマは、麻竹という種類のタケノコを乳酸菌発酵させて作る野菜の発酵食品です。土の中で発酵させるのがポイントであるといえます。日本においては、ラーメンのトッピングとして食べられることが多いです。メンマは中国で伝統的に作られてきました。

ナタ・デ・ココ(フィリピン)

ナタ・デ・ココは、ココナッツの果汁を殺菌したうえで、砂糖と酢酸で発酵させた食品です。ナタ・デ・ココは、発酵させることで膜を作っており、それがほかにはない独特な食感となっています。フルーツポンチやヨーグルトなどさまざまなところでよく利用されており、日本でもスイーツとして人気が高いです。ナタ・デ・ココは、フィリピンで発祥しました。

シュール・ストレミング(スウェーデン)

シュール・ストレミングは、浅漬けにしたニシンを発酵させた食べ物です。とても臭いが強く、世界で一番臭いともいわれている食品のひとつです。スウェーデンで親しまれています。

ザウアークラウト(ドイツ)

ザウアークラウトとは、千切りにしたキャベツを浅漬けにして自然発酵させたものです。空気中に含まれる乳酸菌を活用するのが特徴的です。ソーセージをはじめとするさまざまな料理との相性がよく、ドイツの食事にぴったり合う発酵食品のひとつです。

ピクルス(ヨーロッパ)

ピクルスは、ヨーロッパでよく作られている野菜を発酵させた漬物です。野菜以外にも果物や卵をつけることもあります。日本の漬物とは違い、漬け汁にさまざまな更新料を入れるのが大きな特徴です。

アンチョビ(ヨーロッパ)

アンチョビは、小魚を塩漬けにして熟成させたうえで、オリーブオイルなどとともに缶詰や瓶詰にすることで発酵させます。アンチョビはヨーロッパで特に親しまれてきました。

発酵調味料・飲料

発酵食品のほかにも、世界には発酵の技術を用いたさまざまな調味料や飲料があります。発酵食品を楽しむなら、発酵調味料や飲料についてもしっかり押さえておきたいところです。ここでは、発酵調味料や飲料について紹介します。

ナンプラー(タイ)

ナンプラーはカタクチイワシと塩を一緒にし、屋外に1年以上置いて発酵させたものです。魚に含まれる酵素を使うことで発酵させています。タイで長く親しまれています。

テキーラ(メキシコ)

テキーラは、アルコール度数が35~55%のとても強いお酒です。アロエに似ているリュウゼツランとよばれる植物の根の汁を使って自然発酵させたり、酵母菌を使って発酵させたりして作っています。原料となるのは、アガベ・アスール・テキラーナという植物です。テキーラはメキシコで生まれたお酒です。

海外にはさまざまな種類の発酵食品がある!

海外にはさまざまな種類の発酵食品がある!

実際に見てみると、海外には多種多様な発酵食品があります。それぞれの国の食文化が発酵食品に色濃く反映されていることも多く、独自の食の様子を垣間見ることも可能です。発酵食品はおいしいだけでなく、保存がきくことから古くから親しまれてきました。冷蔵庫などがないような時代には、食品を長持ちさせるということはとても重要なことであったといえます。食品を発酵させれば、食品をおいしく食べられるだけでなく、長く保つことも可能になるので、とても便利な加工方法であったといえるでしょう。
世界の発酵食品は、日本においても多く親しまれています。とはいえ、海外で発祥した食品であることを知ってはいても、発酵食品であることに気付いていないものも少なからずあるのではないでしょうか。しかし、実際には、海外でできた食品の中には発酵食品も多くあります。せっかく海外の発酵食品を食べるなら、それぞれの成り立ちや含まれる成分の効果もしっかりと押さえておきたいところです。きちんと発酵食品の種類や効果を押さえておくことができれば、より世界の発酵食品を楽しむことができるでしょう。特徴を押さえておけば、アレンジして楽しむこともできるようになります。おいしく発酵食品を堪能できるようにして、料理のバリエーションを増やすことができたら素敵ですね。

まとめ

発酵食品は古代から現代まで、人々の生活に深く根ざし、さまざまな地域で重宝されてきました。 その保存性と栄養価の高さから、メソポタミア文明におけるワイン醸造の始まりをはじめ、多くの発酵食品が世界中に広まりました。 酵母菌や乳酸菌といった微生物の働きによって、食品は保存性が向上し、風味も豊かになります。 発酵食品は交易を通じて各地に伝わり、それぞれの文化に適応しながら発展してきました。 現代でも、発酵食品は健康志向の高まりとともに再評価され、多くの人々に愛されています。

通信講座のSARAスクール編集部
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